遺言の作成について

遺言証書完成までの流れ

遺言証書の作成にあたり、次の手順で考えてみましょう。

  1. 自分の財産の把握
  2. 財産をどうしたいかを決定する
  3. 残したい自分の意思があるかを考える
  4. 遺言の内容を整理する
  5. 遺言執行者について決定する
  6. 遺言の方式の決定
  7. 遺言の作成
  8. 遺言の保管

自分の財産の把握

自分の残す財産,何がどのくらいあるのかをまずは把握しましょう。自分の死亡時に所有していた, 金銭で換算できるすべてのものが相続財産です。借金などの負の財産も忘れないようにしましょう。

    ■プラスの財産の例

  • 不動産:土地・家屋
  • 金銭:現金・預貯金
  • 保険:自分が受取人になっている生命保険
  • 有価証券:株券,債権・手形・小切手・商品券
  • 権利:借地権・借家権・営業権・ゴルフ場などの各種会員権・特許権・著作権
  • 物品:自動車・美術品・骨董品・家具・衣類・宝石・貴金属・金銭価値のある動植物など
    ■マイナスの財産の例

  • 住宅ローンなど各種ローン・借金・クレジットカードの未払い分
  • 他人の保証人としての債務

財産をどうしたいかを決定する

自分の財産をどのように処分するかを考えるに際し,自分の法定相続人(法律上相続人としての権利のある人)が 誰であるかを知っておきましょう。 さらには自分が遺言を残さなかった場合どのように財産が分けられるのか,法定相続分についても確認してください。 納得のできる残し方になっているでしょうか?

法定相続に納得いかないなら

法定相続では割り切れない財産の分割に関する自分の思いを遺言に意思表示します。 慈善団体に寄付したい,配偶者に多く残したいなど,さまざまな思いを遺言にしましょう。 オリジナルの遺言を作りましょう。

「思いどおりの分割」……自分の心情や感情を反映した分割

「トラブルを防止する分割」……遺す人たちの生活の状況や性格と,財産の内容を考慮した 具体的な分配でトラブルを未然に防止する分割

財産の配分について考慮する

遺すものの権利また務めとして,誰に,何を,どれくらいのこすのか,細かく具体的に決めましょう。 遺言は法定相続に優先します。

遺留分(いりゅうぶん)について

遺言で自分の財産の分配を自由に決めることが出来ますが,これにはある一定の限度があります。 「遺留分」といわれるものです。妻子がありながら愛人に全財産をのこす, 遺される遺族が経済的に困るのがわかっていながらすべてを他の人に遺贈あるいは寄付するというのには問題があります。 そんな不公平をなくすために一定の人に決められた割合の財産を保証するのが「遺留分」です。

なお,遺留分は主張して初めて取り戻すことが出来るものです。遺留分の請求は「遺留分減殺(げんさい)請求」といわれます。 これは相続および減殺すべき贈与・遺贈を知った時から1年以内にしなければなりません。ですから,あくまでも自分の思い通 りに遺したい場合は「遺留分を放棄してほしい」などの一文を残すこともできます。しかし,法的拘束力はありま せんので聞き届けてもらえるよう文面を工夫しましょう。

もちろん,遺留分を超えない範囲での遺産の分割をしておけば自分の遺言どおりの分割がなされることになります。

残したい自分の意思があるかを考える

遺言が法律上効力を発揮するのは財産の分割や祭祀承継者に関してですが, 葬儀の方法・臓器提供・日記等の処分・自分の死を知人に知らせる… など法的な効力はないものの自分の意思を遺言に書いておくことによって自分の意思をのこされた人たちに伝えることができます。
その際には明確に自分の希望を記して間違いなく意思が伝わるようにします。また,場合によっては実現しやすいように手順など を具体的にしていしたり,理解してもらえるように説明を加えておくことにより自分の意思が果たされるようにすることもできるでしょう。

※注1:臓器の提供などは死後緊急に行われる必要があるので,遺言にすると共に別紙にしておくとか,生前から公表しておきましょう。

※注2:葬儀のやり方などに関する意思なども実際には家族の判断次第ですから,間違いなくそうしてもらいたいと思うなら生前からその 考えを伝え,理解を得ておかねばなりません。

※注3:日記等の処分に関する遺言をおこなう場合,処分しやすく整理しておくことが必要でしょう。

法律上遺言で指定できること

  • 相続の法定原則の修正 相続人の廃除(相続させないこと)、 廃除の取消、相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺産分割の禁止などができます。
  • 相続以外の財産処分 遺贈(遺産を誰かに贈与する)に関する事柄、信託の設定などです。
  • 身分関係に関すること 認知、未成年後見人の指定 など遺言の執行に関することや遺言執行者(遺言の内容を実現してくれる人)の指定などです。

その他遺言証書に書けること

法的な効力がないだけで、家族に自分の思いを伝え,死後に意思を反映してもらうこともできます。たとえば、

  • 家族仲良くしてくれ。
  • 葬式は質素に明るくしてくれ。
  • 戒名はとらず,葬ってくれ。
  • 臓器提供をしたい。

などの遺言も可能です。しかし、このような内容に法的拘束力はありません。

遺言の内容を整理する

ここまでまとめたら今一度内容を振り返ってみてください。情に流されて遺言証書を作成し、後でもめるような遺言を作成される方が時々いらっしゃいます。 感情に流されない慎重な決定をお勧めします。

遺言執行者について決定する

遺言執行者とは自分の死後,確実に自分の遺言の内容が執行されるよう手続きを行ってくれる人のことです。 遺言執行者は遺言で選任するか,相続人などからの請求によって家庭裁判所が選任します。自分で生前に契約するなど, 遺言以外で選任することはできません。

遺言執行者は遺言による子供の認知・特定の相続人を相続人から除く(廃除)またはその取り消し・死んだときに相続人以外に財産をあげる(遺贈)・寄付などの事項が遺言に記載され ている時に選任できます。特に認知や相続人の廃除またはその取り消しが遺言に記載されている場合は必ず選任しなけれ ばなりません。逆にこれらのいずれも記載がなければ選任の必要はありません。

遺言執行者は信頼のおける第3者を選任します。相続人や受遺者もなれます。破産者や無能力者はなれません。 法人がなることも可能です。

執行者の承諾前であっても相続人は相続財産の処分や遺言執行を妨げる行為を行うことはできません。 執行人が選任されているにもかかわらず相続人が行った処分は誰に対しても無効となります。 受遺者(遺言で贈与を受けた人)の権利を守る大きな責任と権利が遺言執行者にはあります。

遺言の方式の決定

3つの方式のうちどれにするかを決定する。ほとんどの人は自筆証書遺言または公正証書遺言を選択 されています。

自筆証書遺言
公正証書遺言証書
秘密証書遺言証書

遺言の作成

親族のもめることの無い、法律にかなった内容の遺言を作成します。

遺言の保管について

遺言が完成したらその保管場所でが問題になります。その内容によりある人にとっては損, 別の人にとっては得な内容になっているでしょうから,生前には見つかりにく居場所に保管しておくことになるでしょう。 しかし,あまり厳重に隠したたために死後誰にも見つけられないのでは意味がありません。生前には見つかりにくく, 死後には見つかりやすい場所が理想でしょう。さらに自筆遺言証書の場合には発見後,隠したり変造したりされないように注意を払う必要もあるでしょう。

また,遺言を作成していることを生前に誰かに伝えておくことが必要です。自分の死後探し出してもらう必要があるからです。 複数の人に言っておくことも出来ますが,不利な内容の場合隠蔽や変造されることもありえますので,保管の場所を銀行の貸し 金庫にするとか行政書士等に保管を依頼するなど相続人の一部では勝手に取り出せないようにすることも必要になります。 また,内容を話さないにしても遺言を作成したことを知らせておくことが相続人との関係で望ましくない場合もあるかもしれません。 その場合には生前は遺言証書の存在自体を伏せておくことになるでしょう。その時は,相続と関係のない第3者で信頼のおける人に 保管場所を含めて話しておくとよいでしょう。死亡時に相続人や遺贈を受けた人全員に報告してもらうように頼んでおけば安全です。

自筆遺言証書は家庭裁判所での検認を受けることが必要ですので,遺言証書を自分で保管しないで信頼できる第3者 (法律の専門家である行政書士などがいい)に預けておくことはさらに安全を高めることになるでしょう。遺言証書の中で 遺言執行までその保管者に指定しておけば執行までより確実に行うことができます。

遺言証書があってももめる場合

「遺言証書を作成すれば、相続は大丈夫!」といいたいところですが、実際には遺言証書を残しても争い(裁判)に発展するケースは 少なからずあります。そのいくつかを取り上げておきます

  • 遺言の方式が法律上無効な場合
  • 遺言者の遺言した時の意思能力の有無
  • 遺言の真贋(本物か偽物か)

方式については論外かもしれませんが、自筆証書遺言の場合にはあり得る話です。

公証人は意思能力判断の専門家ではないので、これを争点として裁判上の争いに至るケースもあります。 この点については医師の診断書を取ったうえで公正証書遺言を作成することでクリアーできると思われます。 しかし、遺言作成のための意思能力についての診断書作成を嫌がる医師もいらっしゃるようなので、 意思能力がまだらでムラがある方の場合には注意が必要です。

遺言の真贋については公正証書遺言であれば全く問題はありません。

行政書士福島総合事務所の結論

できるだけ公正証書遺言で遺言は作成する。判断能力にムラがある場合にはそれが争いの元にならないよう、 十分に配慮する。自筆証書遺言の場合には行政書士などに点検してもらう。