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1. はじめに|「情熱」だけでは続かない時代へ
「放課後等デイサービスを始めたい」
この分野に関心を持たれる方の多くは、子どもや家族を支えたいという強い想いをお持ちです。
しかし現実には、放課後等デイサービスの約4割が赤字とも言われ、開設後数年で撤退を余儀なくされる事業所も少なくありません。
原因の多くは、開設前の収支シミュレーション不足にあります。
本記事では、
- 定員10名
- 最低限の人員体制
- 医療的ケア児なし
という「標準的で現実的なモデル」を前提に、
なぜ普通に運営すると赤字になるのか
どこを改善すれば黒字化できるのか
を、具体的な数字で解説します。
目次
2. モデル事業所の前提条件(福岡市郊外・6級地)
まずは想定条件を明確にします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定員 | 10名(平均利用8名想定) |
| 所在地 | 福岡市郊外(6級地) |
| 施設面積 | 約300㎡ |
| 家賃 | 月15万円 |
| 営業日数 | 月20日 |
| サービス提供時間 | 平日1時間/長期休暇5時間 |
人員体制
- 管理者(児童発達支援管理責任者兼務):1名(常勤)
- 児童指導員:1名(常勤)
- 児童指導員:2名(非常勤・常勤換算1名)
「最小限だが基準は満たす」体制です。
3.【収入試算】基本報酬だけでは限界がある
基本報酬の計算
- 基本報酬:574単位
- 地域区分:6級地(1単位=10.36円)
- 1人あたりの報酬:574単位 × 10.36円 = 5,947円
- 1日あたりの収入:5,947円 × 8名 = 47,576円
- 月間基本報酬:47,576円 × 20日 = 951,520円
加算収入(最低限)
- 福祉専門職員配置等加算:15,000円/月
月間総収入:966,520円
4. 【支出試算】最大の壁は人件費
人件費(月額)
- 管理者(児童発達支援管理責任者兼務):333,333円(年収400万円÷12ヶ月を想定)
- 常勤児童指導員:240,000円(1,500円×8時間×20日)
- 非常勤職員(常勤換算1名):240,000円(1,500円×8時間×20日)
▶ 人件費計:813,333円
※実際には、社会保険料等でさらに約15%増となる点に注意が必要です。
施設運営費(月額)
- 賃貸料:150,000円
- 光熱費・通信費:50,000円
- 保険料:10,000円(年額12万円÷12ヶ月)
- 消耗品費:20,000円
▶ 運営費計:230,000円
5. 収支結果|月約7.7万円の赤字
月間収支
- 収入:966,520円
- 支出:1,043,333円
- 収支差額:-76,813円
さらに、
- 備品・消耗品
- 開設前人件費
- 敷金・礼金
など、初期投資約200万円超を考えると、このモデルのままでは経営は非常に厳しいことが分かります。
初期投資
- 備品・消耗品:800,000円
- 開設前人件費(1ヶ月分):813,333円
- 賃貸契約費用(敷金・礼金):450,000円
- 合計:2,063,333円
6. 赤字から抜け出すための3つの実務ポイント
① 利用率を「仕組み」で100%に近づける
8名 → 10名へ充足率を上げるだけで、
約23万円/月の増収が見込めます。
- 欠席が出た際の即時連絡
- キャンセル待ちの仕組み化
- 長期休暇の積極利用
これらはコストをほぼかけずに実行できます。
② 加算は「取れるものから確実に」
放課後等デイサービス経営の本質は加算設計です。
- 児童指導員等加配加算
- 処遇改善加算
- 特定処遇改善加算
- 関係機関連携加算
「人を増やす=コスト増」ではなく、
報酬構造を理解した人員配置が重要です。
③ 独自プラン・オプション設計
保険給付だけに依存しない視点も欠かせません。
- 教材費・プログラム費の明確化
- 延長支援や特化型プログラム
- 利用者にとって納得感のある実費設定
選ばれる理由=収益安定につながります。
7. まとめ|「続く支援」は設計で決まる
今回のシミュレーションから明らかなのは、
- 何も考えずに始めると赤字
- しかし、改善余地は明確に存在する
という点です。
利用率の最大化
加算の戦略的取得
付加価値あるサービス設計
これらを組み合わせることで、
「質の高い支援」と「安定経営」は両立可能です。
注意事項
- 本記事は一般的なモデルケースです
- 実際の収支は地域・運営方針・報酬改定により変動します
- 開設前には必ず個別の事業計画を作成してください
注意事項
- 本シミュレーションは一般的な試算であり、実際の収支は地域性や運営方針により異なります
- 行政による報酬改定により、収入が変動する可能性があります
- 実際の開設にあたっては、より詳細な事業計画の策定が必要です
