
2025年10月1日から施行された新しい障がい福祉サービス「就労選択支援」。
前回の記事では制度の概要を解説しましたが、今回はその創設の背景と国の狙いを深掘りします。
この制度が生まれた理由を理解することで、今後の障がい福祉事業の方向性や、開業を検討する方が押さえておくべきポイントが見えてきます。
🏛️ 制度創設の背景:多様化する「働き方ニーズ」への対応
日本の障がい者雇用や就労支援の現場では、近年次のような課題が浮かび上がっていました。
- 就労移行支援を利用しても、すぐに職場定着が難しい
- B型事業に通うものの、本当は一般就労を希望している
- 支援機関ごとに情報が分断され、本人に合った選択がしづらい
つまり、「働きたい」という意欲があっても、制度の仕組み上、最適な支援を選べない人が多かったのです。
厚生労働省はこの実態を受けて、「本人中心の支援」「柔軟なサービス選択」を重視する方向へ制度を再設計しました。
その象徴が、「就労選択支援」です。
👥 就労支援の“間”をつなぐ新たな仕組み
これまでの障がい福祉サービスは、
- 就労移行支援(訓練型)
- 就労継続支援A型/B型(雇用・作業型)
など、それぞれ目的が明確に分かれていました。
しかし現場では、
「移行に入るにはまだ早いが、B型では物足りない」
「進路を迷っている段階で支援が切れてしまう」
といった“谷間”のケースが増えていました。
就労選択支援は、この**「支援と支援の間」を埋める中間的なサービス**として位置づけられています。
利用者が「自分に合った支援を選べるように」導くことが目的です。
📈 国の狙い①:本人中心の「キャリア形成型」支援への転換
国は、障がい者雇用を「訓練→就職」という直線的なモデルから、
**「段階的キャリア形成」**へと進化させようとしています。
就労選択支援では、
- 本人の希望・特性・生活状況を整理し、
- 最適な支援(移行・B型・一般就労)を選択し、
- 定期的に見直しを行う
という伴走型の支援プロセスが重視されます。
この考え方は、近年の「障害者総合支援法」改正の方向性――
すなわち「本人の意思を尊重した支援計画(パーソン・センタード・プランニング)」にも合致しています。
📊 国の狙い②:支援の質の可視化と成果重視の流れ
近年、厚労省は障がい福祉サービス全体において、
「数(定員)」よりも「質(支援内容)」を重視する方針を明確にしています。
就労選択支援においても、
- 支援計画の質
- 定期的なモニタリングの実施
- 利用者の進路確定率
といった成果指標に基づく評価が想定されています。
つまり、「どれだけ多く利用者を集めるか」よりも、
「どれだけ本人に合った進路支援ができたか」が事業評価の鍵になります。
🏗️ 国の狙い③:地域での就労支援ネットワーク強化
もう一つの重要な狙いが、地域の連携強化です。
就労選択支援事業所は、単独で完結するのではなく、
就労移行支援事業所、B型事業所、企業、ハローワーク、学校、相談支援事業所などと連携しながら支援体制を構築することが求められます。
この「地域ネットワークのハブ」として機能することが、就労選択支援の特徴でもあります。
地域内での信頼関係づくりや、他機関との情報共有体制が事業成功のカギとなるでしょう。
🧾 制度改正の流れで見る位置づけ
| 年度 | 改正・動き | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2021〜2023年 | 就労支援体系の再構築に関する検討会 | 支援の谷間の是正・柔軟な選択支援の必要性を指摘 |
| 2024年 | 障害者総合支援法改正案可決 | 新たに「就労選択支援」創設を明記 |
| 2025年10月 | 制度施行 | 全国で指定事業開始、報酬告示・基準告示施行 |
このように、「就労選択支援」は一時的な試行ではなく、法制度として恒久的に位置づけられた新サービスです。
💡 今後の展望と事業者へのチャンス
今後、各自治体では指定申請の受付が順次始まります。
制度初年度は情報が少ないため、早期参入する事業者が地域のモデル事業所として注目されやすい状況です。
さらに、他サービス(B型や移行)と組み合わせることで、
- 利用者層の拡大
- スムーズな内部移行
- 支援の継続性の確保
といったシナジー効果も期待できます。
開業にあたっては、「支援の理念」と「事業採算性」の両面を丁寧に設計することが重要です。
📝 まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 背景 | 働き方ニーズの多様化と支援の谷間への対応 |
| 狙い① | 本人中心のキャリア形成支援への転換 |
| 狙い② | 成果重視・支援の質の向上 |
| 狙い③ | 地域連携による就労支援ネットワーク強化 |
| 事業者のチャンス | 初年度の早期開設・併設展開が有利 |
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